お風呂に長く使っていると、手足の皮膚がふやけ、指がシワシワになります。 これに構造的なパターンが見られ、なんらかの機能的な意味や理由を見出して解釈できるのではないかと着目して調べてみました。
排水ネットワークとしての指のシワ仮説
ふやけた指のシワのパターンについて先行研究がないか軽く調査してみると、Changizi et al. (2011) が見つかりました。 この論文では、指のシワのパターンが効率的な排水のためのネットワーク構造を成しており、それにより雨用タイヤのように湿潤状態での握力を高めているのではないかという仮説を提案しています。
Are wet-induced wrinkled fingers primate rain treads? - PubMed
より具体的には、指のシワは局所的な浸透圧相互作用により生じるのではなく、神経を介したものであるとし、ゆえにシワは意味のない構造ではなく、湿潤状態に適応するような機能を果たしている可能性があるとしています。
具体的には、次の図に示す岬型 (Promontory) の排水ネットワーク構造になっているとしています。図 1a は 1b とは逆のたらい型 (Basin) の構造であり、黒線が地形、青線が水を表しています。
論文中では、物体を掴む際に黒線箇所で物体に触れ、青線箇所から効率よく排水をすることで物体保持の効率を高めると考えられています。
実際に湿潤状態での握力が向上しているのかの調査などについては、論文を読んだだけでは何とも言えませんが、非常に興味深い仮説であると感じました。
他の研究: シワが濡れたものの操作性を向上させる仮説
他の研究も見てみましょう。
Kareklas et al. (2013)では、水によってできた指のシワが濡れたものの操作性を向上させることを実験的に検証しています。 一方で Haseleu et al. (2014) が逆の結論、すなわち指のシワが濡れたものの操作性の向上に大きく寄与しないと検証しているため、仮説が正しいのかどうかについてはまだ検討の余地があると考えられます。
まぁ結論、まだよくわからないと理解しておくのが良いでしょうか。
せっかくなので自分の指で試す
ここまで調べてみるとちょっと気になってきたので、自分の指で試してみます。 指のふやけた写真はやや不快な印象を与えるかもしれないので、閲覧にはご注意ください。
自分の指で試した画像 (閲覧注意)
指先にシワが少ないのに対し、指の腹には縦にシワが多く並んでいて、これが谷に対応していると考えられるのでしょうかね。 そのように解釈すれば、実際に Promontory ネットワーク構造の特徴が見られると言えます。
でもイマイチよく分かりませんね。 みなさんもぜひお風呂に入ったとき、自分の指のシワに Promontory ネットワーク構造が見られるかを試してみてください。 何か発見や情報があったらこっそり教えてね。